Best music of 2017 [part 2]

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リズと青い鳥

written by huskie

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北宇治高校吹奏楽部員の成長を描いた群像劇『響け!ユーフォニアム』の劇場版スピンオフ作品。

公式サイト

『ユーフォ』のアニメシリーズにおいて通底しているのが、葛藤〜努力〜勝利の図式に則ったスポ根的で記述しやすい感動と、登場人物たちの間の複雑で”生”っぽい心理描写に負う記述しづらい感動の二種類が並走する点、そして後者のピークが常に甲から乙への「愛の告白」という形式で決着する点であり、筆者は大変惚れ込んでいる。

一方で、『リズと青い鳥』とテレビ版『ユーフォ』とでは、舞台設定や登場人物、先に挙げた特色を共有しながらも、作品の纏うテクスチャーが明確に異なる。

映画『リズと青い鳥』では、二人の主役(鎧塚みぞれ・傘木希美)のお互いを見つめる眼差しの相違と、毎日会話しているようで実は何も話せていない気持ちの相違が、徹底的に積み重ねられてゆく。研ぎ澄まされた劇伴音楽やカメラワークの表現力に支えられたそれらは執拗かつ繊細な作業であり、本作品にある意味とてもマニアックな魅力(それを豊かさと呼んでもいい)を授ける。

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集団行動: 充分未来

written by
Winona Writer

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さあ、未来を振り返ろう──意味深なメッセージと共に届けられた『充分未来』は、真部脩一(Gt/作詞曲)を中心に2017年結成されたバンド「集団行動」の2作目のミニアルバムである。相対性理論、タルトタタン、ハナエ、Vampilliaなど多くのアーティストのソングライティングを手掛けてきた真部の、秀逸なワードセンスがアルバムタイトルをはじめ楽曲の随所で発揮されている。「充分未来」という四文字を示されたとき、ああ、ほんとそうだよな、と思わず深く納得してしまった。現代社会の目眩がするほど現代的な成長モデルと付き合い疲れた辟易を、言い当てられた気分だ。

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YTAMO: ODEON1973​-​2

written by
Winona Writer

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YTAMO(ウタモ)は鍵盤とエレクトロニクスを巧みに操るプレイヤー、実験性とポップネスを兼ね備えたシンガーソングライター/コンポーザー、そしてオオルタイチや嶺川貴子をはじめ数多くのアーティストと共演する名コラボレーターでもある。のみならず、彼女の優れたパッケージデザインの感性を、インディペンデントな作品群のなかで確認することができる。今年、David Bowieの命日に合わせてリリースされたカセットテープ作品『ODEON 1973-2』においても、手作りのアートワークおよびコンサートチケットを模した缶バッジが真っ先に目を引く。

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DJまほうつかい: Girl/Boy EP

written by
Winona Writer

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漫画家/イラストレーターを軸に活動の幅を広げる西島大介、その正体を一層分かりにくくする音楽プロジェクト=「DJまほうつかい」の、アナログ盤で初となるリリース作品について。DJまほうつかいの音楽スタイルは大きく2つに分けられ、1つがメタル+エレクトロニカ=「Metaltronica」と称するDTM、もう1つがピアノによるオリジナル曲の演奏である。後者の流れを汲む『Girl/Boy EP』は、7インチレコードの各面に3曲ずつ、素朴なピアノ・インストとその再構築されたトラックが収められている。

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TAWINGS: Invisible/UTM

written by
Winona Writer

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新進気鋭のフィメール・バンドTAWINGS(トーイングス)が、新曲2曲入りカセット・シングル『Invisible/UTM』を年始に発表、さらに現在入手困難な7インチ・デビュー・シングル『Listerine/Dad Cry』の配信を解禁した。

ゼロ年代のリヴァイヴァルを通過したモダンな音作り、且つそこはかとない“バッド・テイスト”を醸すガレージパンク/ポストパンク。先達の名を借りてTAWINGSの音楽を言い表すとすれば、ダビーなPLASTICSあるいはパーティ要素(およびその倦怠)を盛ったThe Birthday Party。試しに最新作『Invisible/UTM』と、PLASTICSのデビューシングル『TOP SECRET MAN/DELICIOUS』を聴き比べてみてほしい。もし似ていないとしても、両方最高だから。

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慕情 in da tracks

written by
Winona Writer

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慕情、それは『第七官界彷徨』や『たまこまーけっと』の中で人と人との関係性に匂い立つ香気、あの時あの子が頼んだドトールのミルクレープ、15年前夢中でプレイしていたゲーム音楽。そんな身近でありながら名状しがたい慕情をテーマにしたアンソロジー、もといコンピレーションアルバム『慕情 in da tracks』が、新興ネットレーベル〈慕情tracks〉よりName Your Priceで公開された。(2018/5/13追記:現在は有料ダウンロード。6月に楽曲を追加してカセットリリースが予定されている。)

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Ahh! Folly Jet: 犬の日々

written by
Winona Writer

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「やっと日が暮れる」——ありそうで無い、類稀なる歌い出しである。しかも、『犬の日々』の歌詞に通底する“鬱的なきらめき”が、この一言に完全に収められている。元々『犬の日々』は北村太郎が書いた同名の詩を、チャクラ〜現在ソロで活動する小川美潮がほぼそのままに曲を付けて歌ったことで音源となり、その録音メンバーだった菊地成孔があるときラジオで紹介したため、Ahh! Folly Jetこと高井康生の耳に届いたという経緯らしい。ちなみに先の文章で歌詞を評した“鬱的なきらめき”という表現は、菊地が加藤和彦と彼の代表曲『あの素晴らしい愛をもう一度』に対して用いた(と記憶している)言葉の援用である。

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クラッシュ・ワルツ

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Staff H
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撮影:熊本将

・『クラッシュ・ワルツ』@音太小屋、2017/11/25

当ブログの記事を何度か書いて下さった渡辺こうぢが主宰する、演劇ユニット〈ブーケガルニ〉の旗揚げ公演を観た。演目は刈馬カオスの戯曲『クラッシュ・ワルツ』。同作で刈馬は第19回劇作家協会新人戯曲賞を受賞している。

3世代女性3名男性2名によるワンシチュエーション群像劇。一軒家の一室の窓から交差点を見下ろすことができて、いつもそこには花束が供えられている。観客および登場人物の誰も舞台上の人間関係を完全に把握できてない状況から、展開が進むにつれ、それぞれの抱えた事情が明るみになってゆく構成(情報の限定とよばれる作劇テクである、たぶん)が戯曲の肝となっている。その過程で、花束が象徴する悲しい過去の出来事をめぐった争論が続く。めいめいの事情や思いが、交錯し、衝突し合う。

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